親父の背中〜その4

前回の記事はこちら。

親父の背中〜その3

 

 

 

 

(12月31日)

今年最後の営業日の朝を迎えた。

 

 

 

 

いつもよりも早く目が覚めた。

 

 

 

 

目を覚まして
おそらく今日が危ないかな。。。

 

 

 

何の根拠もないけど
オレは、そう感じた。

 

 

 

 

 

父も理容師。

 

 

 

 

暮れの忙しさを何十年も乗り切ってきた男だ。

 

 

 

父は、オレの仕事が終わる前には
絶対に逝かない。

 

 

 

 

その望みにかけて
サインポールを回した。

 

 

 

 

朝一番のお客さまに連絡を取り
事情をお伝えして

ご予約の時間よりも早く来てもらえるよう
お願いをした。

 

 

 

 

 

ずべてのお客さまが

『年が明けてからで良いよ』

と言って下さったが、

 

 

オレの方から

『年末のお客さまをやらなかったら
親父に叱られるんでやらせて下さい!』

 

と、お願いをして
髪を切らせていただいた。

 

 

 

 

 

全てのお客さまを切り終え
床のに落ちた髪の毛も掃かずに
店を出発して病院に向かった。

 

 

 

 

 

 

『お父さん!今行くぞ!!』

 

 

 

 

 

妻の運転する車に乗り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

父のことを考えると
とてもまともに運転できる状態ではなかった。

 

 

 

 

病院に行くと
昨日よりもさらに父がぺたんこに見えた。

 

 

 

 

『お父さん!来たよ!

 

 

 

全部、仕事やってきたぞ!!

 

 

 

 

間に合ったぞ!!!!!!!!』

 

 

 

 

その瞬間、
病室の空気の色が変わった気がした。

 

 

 

 

 

まるで父の優しさのオーラに包み込まれているような
感覚だった。

 

 

 

 

いろいろな管や機械が父の身体に
つながっていた。

 

 

 

モニターには、

 

 

心拍、血圧、血中酸素、呼吸曲線が
表示されていた。

 

 

 

 

すでに血圧が低すぎて
測れない状態だった。

 

 

 

 

 

 

下顎で動かしながら
呼吸をしていた。

 

 

 

 

『はぁ、はぁ、はぁ・・・。』

 

 

 

手をさすっても
足をさすっても冷たい。。。

 

 

 

 

 

何回もさすっているのに
温かくならない。

 

 

 

 

血中酸素が90を切り始めると
看護師さんが酸素濃度を上げてくれた。

 

 

 

 

 

だが、またしばらくすると
また90を下回り
アラームがなり始める。

 

 

 

 

 

それまで下顎を使って
全身で『はぁはぁ~』息をしていた父の
呼吸の力が弱くなったように感じた。

 

 

 

 

 

 

隣にいる妻に
『お母さんを呼んできて!!』
と言った。

 

 

 

 

 

 

間もなくして病室のドアが開き
母がやってきた。

 

 

 

 

 

 

 

お父さん、死んじゃだめだよ。

 

お母さんを置いて逝ってはだめだよ。

 

 

 

 

オレはただ、ただ父の手を握り
自分の顔に何度もこすりつけるだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

二人の息子たちが病室に入ってきた。

 

 

 

 

 

少しずつ呼吸が浅くなっていき
下顎が動かなくなっていった。

 

 

 

 

 

 

そして心電図がまっすぐになった。

 

 

 

最後は眠ったかのような顔だった。

 

 

 

 

 

まだ温かい父の手を触り、
ずっとふんばっていた父の足に
顔をうずめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お父さん、ありがとう。

 

 

 

 

 

 

とっても頑張ったね。

 

 

 

 

 

 

 

オレはお父さんの子だよ。

世界で一番すげー男の
子どもだよ。

 

 

 

 

お父さんの子どもで良かったよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

12月31日18時07分

78歳の生涯を終えて
父は、旅立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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