かわいい子には旅をさせろ!シリーズ⑤
第一話
今から1年前の冬のことです。
雪が降るくらい寒い中
長男の野球を見ていました。
練習後に合宿のお知らせの手紙を
コーチから頂きました。
合宿というのは年に数回あるらしく
いろいろな教室の子どもたちと
一泊二日で過ごすらしいです。
長男はまだチームに入ったばかり。
話しかけられることは
あっても自分から話すことは
ないようです。
まだお友だちが
一人もいない状態で
見知らぬ場所に一人で
行かせるのは酷かな…?
そう感じました。
私の家は
ひいおじいちゃんから
4代続く理容一家。
小さい頃から
『たかひこは跡継ぎだから!』
そう言われるのが
たまらなく辛かった。
高校三年生の時
様々な葛藤がある中で
この道に進むと決めました。
そして
人見知りのオレだからこそ
誰も知らない環境に身を置こう!
そう決意しました。
地元の専門学校も
考えたのですが、
東京に行くことにしました。
高校まで丸刈りで育ち
おしゃれとは無縁の生活を
していた私が
東京になじむのは
時間がかかりましたが
この道に進め!
と言ったのは親だけど、
この道に進む!
と決めたのはオレ自身。
そう何度も
自問自答をしながら
過ごしました。
そんな過去があるからこそ
初めて会うお客さまとも
お話ができるようになりました。
私と同じように
人見知りの息子が
この合宿を通して
何かの刺激になれば…。
そう想う気持ちと
まだ小さいのにかわいそうかな?
という気持ちとの葛藤がありました。
第2話
次の週、
コーチと長男が
こんなお話をしていました。
内容は春休み(2020年4月)に
予定されているチームの合宿についてです。
長男とコーチとの会話です。
春休みの合宿来るだろ?
いや・・・。
行きたくないの?
はい。
そうか~。
なんで行きたくないのかな。
理由を教えてよ?
はい。
なんでかの理由は
自分ではわからないですが、
合宿に行きたくない!
ということは分かるんです。
こんな会話をしていました。
練習から帰る車の中で
長男と話しました。
野球楽しいか?
うん、楽しい!
そうか~良かったね。
そう言えばさっき
コーチとのお話だけど
”理由は分からないけど
行きたくないんです!”
って言ってたけど
理由は分からないの?
うん・・・。
そうか~。
お父さんはいつも自分で考えて
よく分からない時は
どうした方が良いよ!
って言ってるかな?
まず、やってみる!
って言ってる。
そうだね。
いいか・・・。
合宿には行くのは
おまえ自身だ!
どうするかは
自分で決めればいいよ。
うん、分かった。
オレが進む道を
自分で決めたように
長男にも自分のやることは
自分で決めさせたい!
そう、考えています。
結果はどうなるのか…?
第3話
次の週、
野球の練習に連れて行く車の中で
こんな会話をしました。
お前はなんで野球を
やっているのかな?
楽しいから!
そうか~。
楽しいのは良いね~。
野球をやる中で
目標ってあるの?
たっくんに負けないように
なりたい。
(こんなエピソードがありました。)
↓
そうだな。
お友だちのたっくんと
いずれ野球をやる日のために
たっくんに負けないように
お父さんと二人で
頑張ろう!
って約束したんだったね。
うん。
でもさ~、
勝ち負けってどうやって
決めるの?』
試合で決めるんだよ!
そうだよね。
試合で決めるんだよね。
お前が入っている
野球チームは普段は
練習しかやらないし、
試合は合宿でしか
やらないみたいだよ。
練習をやるのは良いけど
その試合をやらないと
自分がどれだけ
上手くなったか、
自分はどういうのが
出来ないのかが
分からないよね?』
うん。
でも、ルールも
分からないし・・・。
そうだよね。
まだよくわからないよね。
でもね、
分からないから
試合をやることで
覚えるんだよ。
だからルールが分からないのは
気にしなくていいよ。
試合をやりながら
覚えればいいよ。』
うん、分かった。
それとな、
野球の試合は
とっても緊張するかもしれない。
緊張って分かる?』
うん、運動会で
走る前に緊張した!
たかひこ
あ~そうだよね。
走る前は緊張するよね。
緊張すると
いつもより早く走れる
かもしれないけど、
緊張しすぎると
いつもより走るのが
遅くなっちゃうかも
しれないんだ。
分かる?』
うん、分かる。
そういうのも試合をやれば
経験出来るかもね。
合宿でしか
試合はやらないから
今のお父さんのお話を
自分で考えた上で
合宿に行くか、行かないかは
自分で決めなさい。
行く時はお父さんと
お母さんは全力でサポートする!
もし、行かなくても
お父さんは何も言わない。
今日の練習始まる前までに
合宿に行くか、行かないかは
自分で決めて
自分でコーチに言いなさい。』
はい。
車を降りた長男と二人で
練習が始まるまで
キャッチボールをやりました。
練習が始まる前に
コーチに聞かれました。
合宿どうする?
行きます!
歯切れのいい言葉で
言っていました。
親が行け!
と言って行かせるのではなく
自分で行く!
と自分で決めることが
大切だと考えています。
ホントは心配で心配で
しょうがないですが、
この合宿を通して
メンタルが鍛えられれば
と思います。
かわいい子には旅をさせろ
その言葉通り
親として本当にに旅をさせる時が
来ました。
親としてオレ自身も
初めての経験ですが
見守りたいと思います。
第4話
しかし!
この時の合宿の予定は
昨年の3月だったのもあって
コロナで延期に・・・。
そこから2カ月後。
昨年5月。
自粛解除になり
再び合宿の日程が組まれましたが
またもや延期。
長男がこのチームに入って
1年も経つのに
チームメイトと
打ち解けている様子がない状態。
いくら違う小学校の子とはいえ
いくら何でももう少し仲良く
なるとは思うのですが…。
長男自身、
野球はとても好きなようですが
引っ込み思案なところがあります。
野球の練習中は
チームメイトと
少しは話すのでしょうが、
自分から話しかけている感じでは
ありません。
そんな時に
またもや合宿のお知らせが・・・。
今度、野球の合宿があるらしいよ。
お前行くか?
えっ、オレ行きたくない。
なんで?
なんとなく…。
前にも言ったことがあるけど
お前の入っているチームは
合宿でしか試合を経験することがない。
試合をやらないで
練習だけするっていうならば
もう野球はやめなさい。
じゃぁ、行く。
こんなわけで
計画を立てていました。
しかし1週間前になっても
長男は行きたくない様子。
そして・・・、
3日前になっても
行きたくない様子。
少しでもチームメイトと
仲良くなれたら
もっともっと野球が楽しくなるはず。
それには野球の練習だけでなく
野球以外の時間を一緒に過ごすことが
一番だと考えました。
コロナの問題があるので
妻とコーチや宿泊先のスタッフが
連携をとって万全の状態。
長男の小麦アレルギーのことを
ホントに考えてくれているのが
伝わってきます。
ところが前日の今日になって
県の要請で県内の施設が
全て使えないことに…!
いわきでやるはずの合宿が
急きょ、福島県郡山市で
やることになりました。
食事の問題があるので
長男の食事は
合宿1日目の昼、夜
2日目の朝、昼の4食すべてが
おにぎりになるとの事…。
まわりのみんなが
普通に食べているのに
長男だけがそれでは…。
流石に・・・。
妻は行かなくても
良いのでは?
という意見。
そこで私は長男が
学校から帰宅するのを待って
聞きました。
明日の合宿なんだけど
いわきでやる予定だったんだけど
コロナの関係で
急に郡山っていうところで
やることになったんだって。
ふ~ん、分かった。
でね、
お前のご飯のことなんだけど
アレルギーのことがあるから
1日目の昼、夜と
2日目の朝、昼の4食すべてが
おにぎりになるんだけど…。』
うん、良いよ!
えっ!
良いの?
みんなは違うんだよ。
だってしょうがないじゃん!
食べられないよりマシだよ(^^♪
こいつ・・・、
強くなったな。
こんなこともあり
急な宿泊場所変更にもめげずに
合宿参加を楽しみにしていました。
ところが夜になって…。
チームメイト全員が
郡山の合宿を
キャンセルするという連絡が!
合宿がいわきでやるならばまだしも
コロナが多い郡山でやるのでは・・・。
と言うことで
キャンセル者が続出しました。
さすがにチームメイト全員が
行かないないのに
長男だけ参加するのはな~
と思い、
結局中止にしました。
長男の意見を聞かずに
私の判断で中止にしたことを
後悔しました。
第5話
そんなことがありながら
実に最初の計画から
1年が経った今日。
春休みを利用した
合宿が計画されました。
不安そうな顔をしながら
出発の挨拶に来た長男に
こう言いました。
いいか。
試合では思い切り振れ!
空振りしても良い。
中途半端にはやるな。
思いっきりいけ!!
私の野球部時代。
ボールを当てるのが
割と得意な選手でした。
でも、そのせいか
空振りを怖がり
いつも当てにいくことも
しばしば。
長男には
そんな中途半端なプレーを
したくなくて
とっさにそんなことを
言いました。
今日、明日を考えるならば
別に無理して合宿にいく必要はない。
しかし
こいつの20年後を考えたら
今ここで合宿を体験することが
大切だと考えました。
子育てで判断に迷ったら
20年後に未来のために
今、どうするべきか?
そんなことを考えて
息子に接しています。
初めての合宿。
初めての試合。
頑張れ、息子よ!
それでは、また明日。